生涯現役社会の条件 清家篤 中公新書
６５才以上の人口が７％を超えると高齢化社会、１４％を超えると高齢社会と呼ぶが、日本は１９９５年に高齢社会へと突入した。この比率は増え続けて２０１５年には２５％に達する。高齢社会は少子化社会でもあるわけで、年金の負担とか労働力という面だけ見ても、高齢者は受益し、若年層がそれを負担するという状態を続けることは今後明らかに不可能になってくる。幸いにも日本人は、高齢になっても労働意欲は潜在的に旺盛であるから、これから実現する高齢社会においては、高齢者が労働しやすい社会的な仕組みを作るべきであり、特に年金制度を働く高齢者に有利な制度にするべきだという著者の提言は至極もっともである。現在の様な景気低迷によるリストラばやりの時には、定年の６５才延長などを含む、この様な提言は突拍子もなく聞こえるかもしれないが、長期的な日本の労働力人口構成の推移を見るならば、今こそ、将来に向けて、高齢者が働きやすい仕組みを作っておくことは絶対に必要だ。本書が詳しく提言している公的年金制度の改革も焦眉の問題であろう。そもそも、社会主義思想に基づく、万人共通に年金を受けられるという基礎年金の考え方は、アリとキリギリスの話ではないが平等を求めて、結果は不平等になっている部分がないとは言えない。国民年金の未納問題とか年金負担の公平感には、不満の声も多い。年金の報酬比例部分を厚くするとか、確定拠出型年金制度の併用を考えるとか、やはり年金の積立が多いものは、給付額も多いという制度を考えないと、年金に対する国民的な賛同を得にくくしてしまうのではないだろうか。こんな事を大声で言えば、「弱者の切り捨て」だとか何とかむしろ旗でも立っては困るので、まあ静かにしていようとは思うが。著者もこの辺の問題になると、多少奥歯に物が挟まった様な言い方になってしまっているのが不満だが、高齢社会への提言として中々面白い。