株主総会 奥村宏 岩波新書
小池隆一という総会屋に対する、野村、一勧の利益供与事件の摘発がきっかけで、日本をこの５０年間支えてきた、日本的システムの全体ががらがらと崩れていくような勢いだ。それではこの日本を変革してしまうほどの影響力のある総会屋とはそもそも何者なのか。本書は形骸化した株主総会の実体、又、何故、株主総会が形骸化してしまうのかから説き起こし、それではそもそも「株主」とはだれのことなのかと言う議論を展開する。「株主総会の活性化を」等という浅薄な論調にも鋭く迫り、総会の活性化等ということが如何に空辣な論議であるかを指摘している。総会屋という商売は日本と韓国にしかいないというが、何故なのか。それは日本と韓国以外には総会屋的な存在がいたとしても会社側が金を払わないからだ。では何故、日本では総会屋に金を払ってきたのか。それは日本の株式会社の成り立ち、意志決定のシステム、株式持合という制度等々に理由があるのだという具合に、総会屋からはじまって、順々に日本型会社システム、日本型資本主義についての、分析と解説になって行く。際物的な主題から始まり、日本の経営構造の深淵にせまるという、中々の力作である。株式会社というシステムの欠陥等についても、述べられており、又将来の会社システムは株式会社方式をとらないとすれば、どういう組成になっていくかの予測等もなされて興味深い。