報われない努力はない 千本倖生 ごま書房
著者は８４年にＮＴＴを退社し、ＤＤＩの設立に携わり現在慶応大学教授という経歴を持つ。大学教授のかたわら、ベンチャー企業の立ち上げにも携わっているとのことであり、異色の大学教授ということが出来よう。ビル・ゲイツのような起業家がなかなか育たない日本の風土では、リクルートの江副や、アスキーの西の様に一時期ベンチャーの旗手と言われながら挫折したものが多く、その意味ではＤＤＩのＰＨＳも苦戦しているようだが、良いときに身を引いた著者等は、日本の成功したベンチャー起業家としての数少ない生き残りと言う事になるだろう。（もっとも、ＤＤＩが本当の意味でベンチャーなのかには、いささか疑問がないではないが。）昔から、「私はこうして１００万長者になった」と言った類の本があり、１００万長者になった人が、為せばなる、努力すれば報われると言ったことを書いた本があったが、言い方は悪いが、本書は「私はこうしてベンチャーで成功した」式の本であり、前者の本と同様に、この本を読んでもまずベンチャーでの成功法を得ることはできないだろう。アメリカ仕込みとは言うが著者の語るベンチャー成功法は、終始一貫「為せばなる」「夢を持て」の精神論がほとんどで、「ベンチャーで成功するには、宗教をもつべき」等の話に至っては噴飯ものではある。この程度の主張でベンチャーを語っている人が第一人者というのだから、確かに日本でのベンチャーの興隆への道は遠いと言える。