日本銀行の真実 山脇岳志 ダイヤモンド社
国際的にも最強の部類に属する円の番人としての日銀は、正に銀行の中の銀行ではあるが、ほんの少し以前迄は、世間の関心もさほど強いものではなかった。公定歩合の上げ下げでさえ、金丸発言等に表われている様に、政治、或いは大蔵という行政が意思決定し、日銀は儀式的に追認しているかの様に思われていた時期も長い。しかし、ここに来て日銀に対する関心が一気に高まったのは、バブル崩壊からの経済混乱や、銀行の破綻処理スキームで、実は日銀というのは、眠れる獅子であって、余りにも長く眠っていたが為に、日本経済の混乱を深めてしまったのだと言う事を、多くの人が気がつきはじめたからだろう。又、エリート日銀マンの逮捕に迄至った、過剰接待等の不正腐敗からであり、神格化されてもいた日銀の地位も一気に落ちてしまった。本書は、長く日銀記者クラブに属していた、朝日新聞記者が今だから言おうという、内部ネタを含め、日銀の内部、この２０数年の日銀の動きを語った物だ。新聞記者だから第三者と言う訳にもいかないのは、やはりこの記者クラブからの発言では、どうしても身内からの発言にならざるを得ない。三重野、松下と続いた総裁の時代に、日銀がどの様な過ちを犯したかについては、客観的に述べられているが、日銀が何故その様な過ちに至ったかを、どうしても、大蔵や政治の所為にしがちで、日銀はどちらかと言えば被害者だと言った論旨になるのは本書の欠陥だ。偉い筈の、日銀、大蔵が、今になって考えれば何故こんな過ちを、次々に起して来たのかを、もっと掘り下げて書いて欲しかった。（９８年４月発行）