地球の落とし穴 広瀬隆 ＮＨＫ出版
著者はルポライターとして良く名前をみかけてはいたが、本書を読んで、相当な奇人、変人、頑固者の類であることを知った。悪い意味ではなく、廻りの言説にあれこれと左右されない自分の意見を持ったという意味でのいわば褒め言葉でもある。特に立花隆流の情報収集力と、それらを読みこなす能力は優れている様だ。取り上げられているテーマの幅は広いが、多くのトピックスは「事の真相はこうだ」という種類の話が主体で、その意味ではスキャンダラスな暴露ものの範疇を超えていないというところが限界でもあるが。ダイアナ姫の地雷撲滅運動という美談も、実は裏からみれば彼女の家系、あるいは彼女と一緒に事故死したアル・ファイド一家が実は如何に世界の兵器ビジネスで阿漕な稼ぎをして来たのだとか、平和の仲介者として知られ、後に暗殺されたパルメ首相が実は武器商人として暗躍していた事などを、暴露しているのは、著者の既存の権威に対する反骨をあらわすものなのだろうが、やはりやり方として「汚い」気がする。一方ホームレスに対する盲目的とも言える擁護論、同情論は、その事で迷惑を被る人達の事は一切無視して、屁理屈的だし。何れにせよ、著者の頑として自説を曲げない、奇人ぶりは見方によっては面白い。（９８年３月発行）