１０年デフレ 斎藤精一郎 日本経済新聞社
既に景気の低迷がはじまってから８年が経とうとしている、これはバルブ崩壊にともなう金融システムの危機と言う事をきっかけにして、猛烈な資産デフレが起こり、そこへグローバリゼーションと言う見方によっては暴力的な基準の採用を強制されたこと、日本の官僚制度、政治風土と言う制度疲労が合いまった事から起きたものだと言うが、丁寧な学者らしい、起承転結の解説は分かり易い。著者によればこのデフレは後三年続くと言う。その３年後に日本が如何にあるべきかと言う、処方箋も明示されており極めて示唆的ではある。但し、前半の分析部分と後半の処方箋の提案部分では、分析の密度が大分違う様な感じがする。どちらかと言うと株主資本主義の部分的批判が、えてして旧来の日本型とも言えるステークスホールダー資本主義の賛美になってしまう所と、いささか似ていなくもない。著者は第４の資本主義として、シューペンターを紹介しているが、この部分をもう少し詳細に解説し、納得させて呉れればよかったにとは思う。（９８年１月発行）