黒人野球のヒーローたち　　佐山和夫　　　中公新書　　　　　

現在のアメリカのメジャーリーグは黒人選手の活躍抜きには考えられないが、実は１９５０年頃迄は、メジャーリーグには黒人選手は参加できなかった。其れまで黒人選手達はニグロリーグという彼らだけのリーグを持っていた。実はこんな話しは全く知らなかったが、著者も十数年前は同じであったと言う。ひょんなきっかけから、このニグロリーグを調べ始めた著者の興味は年毎に増して来ているようだ。このニグロリーグのチームは日本のプロ野球がはじまる以前に、日本を数回訪ねており、その卓抜の技量は当時の日本人を熱狂させたという。野球はアメリカで始まったスポーツで、正にアメリカらしいスポーツだ。リンカーン大統領も野球の熱心なプレーヤであったと言うが、ニグロリーグの興亡と、そのリーグで、今や伝説となった数々の偉大な記録を作ったプレーヤ達を知ることは、とりもなおさずアメリカの文化と歴史を知ることになって行く。ニグロリーグは２０世紀の中初頭期にその最盛を極め、メジャーリーグをはるかにしのぐ人気を誇っていたという。技量のみならず、観衆を喜ばせる数々の興行的趣向をこらしていたとのことだが、本書の記述を読むだけでも実に楽しくなってくる。サチェル・ページの一日４試合登板とか、ジョシュ・ギブソンの１８０メートル飛んだホームランとか、本当に一度見てみたかった。本書の著者、佐山和男氏はこのニグロリーグの研究を更に続けて行くとの事だが、次作を期待している。

（９４年３月発行）