変わる世界、変われ日本！　　　　大前研一　　　　ＰＨＰ研究所　　　　　

やることなすこと好調なアメリカ、何もやらない為に状況がどんどん悪くなる日本という論調も、ここに来てヘッジファンドの巨額損失やらIMFの度重なる失策などで、一頃の勢いは多少は失せて来ているようにも思われる。いつもの大前節で、先ずアメリカが経済好調によって、傲慢な国になっていること、その中には国民のモラルの退廃があること等を例証しての導入は、痛めつけられて来た日本にとっては、「そうだそうだ」と頷ける部分が多い。アメリカの現在の繁栄が実は、ﾄﾞﾙの基軸通貨としての特権を悪用して、世界にインフレを押しつけることで、得られているという指摘は、最近良く見る論調だが、大前研一がオリジナルなのだろうか。その様なイントロから、それではアジアはどうすれば、再生して行くのか、日本はどうあるべきかの提言に向かっていくのだが、巻末には著者が幹事をつとめている「民間金融財政臨調」の提言なども載っており、具体性がある。別に目新しい提案という訳でもないが、もう議論ばかりを積み重ねていても、日本の現状は救われないし、要は「実行」が大切ということなのだということを、改めて感じる。

（９8年８月発行）