哲学史のよみ方　　　　　田島正樹　　　　　　ちくま新書　　　　　　　

究極の学問とも言える哲学は、又、逆に純学問的すぎるか故に今日、この研究に没頭する者はそんなに多くはないはずだ。又、ヘーゲルにせよカントにせよ何れも先達と言われる偉大な哲学者は天才の名を欲しいままにして来た人々であり、天才のかけらもない我々一般の人間がこんな分野に挑戦してみたところで、アリがエベレストを登るようなものではないかと言う気になってしまう。哲学自身の解説書は基本的に難解であり、哲学史の解説書は、単なる「誰が何と言ったか」を羅列するだけの、哲学年表である場合が多い。その様な中で、著者は、哲学史を解説しかつ哲学の解説を行うという二重の挑戦を行った。他の書評によれば、見事に哲学と言う難解な分野を、こなれた形で解説すると言う偉業を達成した名著であるという。本書に於ける個々の指摘で、「ああなるほどヘーゲルはこう言う事を言っていたのだな」といった具合に、あらためて目を洗われるような気がする部分が確かに多い。しかしながら、浅学非才の書評子にとっては、本書に書かれている個々の哲学思想を、再び系統立てて「哲学体系」の知識として吸収できたかとなると、全くそんな事は無く、再び哲学全体は茫洋たる霧の中の存在になってしまうのだから、まあ、自身の知的レベルの低さもあるものの、やっぱり哲学は難しいといわざるを得まい。

（９８年２月発行）