超高齢化社会の経済学　　　　　　石山嘉秀　　　　日本評論社　　　　　　

タイトルおよび、序章の部分からこの本は日本終末論的な日本の直面する高齢化問題に焦点をあてて恐怖心をあおる類の著作かと見えたが、読み進むにつれて、全くその類の際物でもなく、又取り上げた素材は高齢化問題に絞ったものでは無く、来るべき高齢化社会の分析の観点から、現在の日本の政治経済を全般に俯瞰しているものである事がわかった。我々が来るべき高齢化社会にどう備えるべきかという問題の答えを探るには、現在の社会、経済の問題点を的確に捉え、それらの解決方法を考える事によってのみ得られるのだと言う事が良く理解できる。紹介されている様々な数字も豊富で、例えば、先ず最初の部分で述べられている、日本の高齢化と同時並行で進む、人口減少と言う事態が、メリット、デメリットを含めて、どの様なもので、どの様な問題があるのかがはっきりと明示されている。又、現在の社会保険制度、特に国民年金の問題点、医療制度の欠陥はどこにあるのか、老人に対する介護の問題、現状、対策はどうなっているのか等、本書の触れている分野は実に広く、しかも解説も丁寧になされている。著者の論旨は、後半では現在日本の抱えている、財政構造の問題、高コスト、無駄な公共事業の問題点、官僚制度と天下りの弊害の問題等々、とどまるところを知らぬかの様に網羅されており、小気味が良い。力作であり、取り上げている問題が時宜にあっているし一読を勧めたい本である。

（９８年１月発行）