マネー敗戦　　　　吉川元忠　　　　　　　文芸春秋　　　　　　　　　　　

世界一の債権国である日本が経済苦境に呻吟し続けその回復の可能性すら危ぶまれ、一方世界一の借金国であるアメリカが好況に沸いているのは何故か。色々な理由が積み重なっており様々な解説が語られている。しかし結果論でいえば、現在の債権国である日本の惨状は、１９８０年以降に日米間で続いたマネー戦争における大きな過ちの結果であり、それは「マネー敗戦」というべきものだと本書はいう。その敗戦の根本の原因は、日本がその対外債権を自国通貨である円ではなく、相手国通貨であるドルで持ち続けたことにあるとする。それでは何故みすみすこのようなマネー敗戦につながるようなドル建て債権の積み上げを日本が行って来たかが、８０年以降の時系列で詳述されている。確かにこの２０年間、日本は失敗に失敗を重ねて来て、マネー戦争を負けるべくして負けたともいえることが良く分かる。それでは今後、円はどうすべきかを著者は提案しているが、一つの方策は発足したユーロと円のリンクを強めることであるとしている。極論すれば円はユーロに加盟してしまえということかとも思うが、この提言の部分には未だ未だ考察していかなければいけない点が多いように思う。しかし、何しろドル離れとはいわない迄も、国富におけるドルのポーションを下げる努力は絶対に必要であろう。

（発行９８年１２月）