ヘッジファンド　　　　浜田和幸文春新書

著者は、現在は国際未来学者という風変わりな肩書きを名乗っているが、以前には米国の戦略国際問題研究所に勤務していた経験をもつということで、いかにもそれらしい、国際的陰謀とか、ややスパイ小説がかった物事の分析が得意のようだ。カジノ資本主義とも言われるようになってしまい規律を失ったグローバル資本主義の鬼っ子である、ヘッジファンドと、その代表的プレーヤであるジョージ・ソロスの背後にどのような、陰謀があるのかと言った語り口は、ジャーナリスティックで面白いし、あながち荒唐無稽とも言わせないだけのデーターもそろい読みごたえがある。アジア通貨危機を仕掛けたのは誰かと言ったテーマは結局いつまでたっても犯人が挙がる話しではないだろうから、こういう機会にこういう裏話だったのだと言われれば、成る程、そういう事もあるかも知れないとも思えて来る。著者は、例えばアジア通貨危機の元凶は、その事で利益を受けたEU諸国の何らかの陰謀があるといった語りだが、一寸飛躍しすぎの感がしないでもない。ソロスの背後にロスチャイルドありという話しや、欧米の世界不況の日本犯人説の背後にはどのような、思惑があるのかといった話しは、確かに著者の投げかけを検証してみたくなる問題ではある。

（発行９９年１月）