市場の法則伊東元重講談社

世界の経済が「市場化」に向かっていることは、好むと好まざるとによらず避け難い事実である。市場化が時には暴力的であるから、その荒波に如何に準備、対処すべきであるかとか、あるいは、旧来の文化、伝統と「市場化」という新しいルールの調和をどのようにはかっていくかという、解決すべき問題は数多いものの、だからと言って、どの国の経済も今や「市場化」に背を向けて後戻りすることは出来ない。市場化は恐れるべきもの、デメリットのあるものとばかり捉えるのは正しくない。市場化には大きなメリットがある。市場化をとりいれるならば、経済は飛躍的に発展する。アジア経済が奇跡の発展を遂げたのも市場化の波があったからこそである。又、現在は低迷状態に陥っているそのアジア経済の再生さえも市場化を上手く活用することで成し遂げられるだろう。その様な状況の中では、「市場の法則」を知り、それを活かすことを考えるべきだというのが著者の主張である。実際の、企業の事例などを掲げて、著者のいうところの２８の市場の法則を解説したのが本書である。一般読者向けの、いわば「市場化」の中で如何に儲けるかの「ハウツー物」という作りである。「競争のメリット」、「コアコンピタンスとは分かりやすく言えば何なのか」、「為替の予測は不可能」、「儲かる投機は世の中の為になる」といった項目だけでも、読者を引き付けるだろう。東大の教授という肩書きの著者ではあるが、結構、けれん味がある。

（98年9月発行）