総合商社ビッグバン　　河村幹夫・林川真善　　　東洋経済　　　

戦後の日本経済を支えて来た総合商社は、商社無用論、商社冬の時代といわれた時期を何とか乗り切って来たものの、バブル崩壊以降の日本経済全体の構造改善を迫られる中で、又、ビジネスの情報化、グローバル化が進む中で、伸吟を続けている。それは、今まで何度か乗り越えて来た、景気循環型の危機の為ではない。商社自身のファンクションが問われているのだが、その２１世紀における商社のファンクションは何かを大胆に提言したのが本書である。両著者は共に、三菱商事OBで企画調査に携わって来ており、その経験をもいかした提言は大いに示唆に富むものだ。

総合商社はピラミッド型の組織から、人材、戦略、組織構造、専門能力、システム、ミッション、価値観、風土という七つの支柱の中にはりめぐらされた、フラットなクモの巣型の組織になるべきであると言う。この、クモの巣はニーズ、シーズ、ウォンツをキャッチし、又、「問題解決」を提供することで、ビジネスの「囲い込み」をして行こうとするものだ。現在、各社が進めているITこそが、次世代の商社のファンクションになるという説に繋がるものだと思う。現在、リストラによって、「縮減」をはかっている各商社の、未来像が中々見えて来ていないが、そのような中での一つの提言として、価値は高い。著者によれば、この様な新たなビジネス・パラダイムへの変化を先取りし、「囲い込み」を行っていけない企業は21世紀に生き残れないというが、慄然とする指摘だ。

（９９年４月発行）