続・日本国の研究猪瀬直樹文芸春秋

世の中には腹の立つことが多いが、あらためて思い切り腹を立てて怒ってみたいと思う人がいたら、本書はお勧めだ。櫻井よしこが、本書評でもとりあげた「日本の危機」で告発しているのと同様に、日本の政官財の不正義、不合理に対する著者の告発と怒りは多くの共感を呼ぶことだろう。税金の取り方もおかしければ、その使い方もおかしい、この国の制度。金の集め方と使い方は、税金だけに限らないし、道路公団などに代表される公団公社で、一体どれだけの無駄と不正義が行われているのか、本書の記述は詳細にわたる。しかしそれらの不正義を、知ってか知らずか国民とマスコミは告発することもない。天下りのお年寄りが何もしないで、お茶を飲んで帰っていくといわれる「公益法人」のでたらめぶりと、改革案が出てもそれを巧妙に骨抜きにしてしまう官僚と、その様な彌縫策に丸め込まれてしまうマスコミ。理念を失った政治と、モラルを失った金融機関、等々。

著者が｢文芸春秋｣に連載した記事をまとめたものだが、取材は綿密で詳細なものであり、又、著者の社会に対する告発という強い意志が、文中に溢れており、ぐいぐいと引き込むものがある。過去約二年間に亘る、記事をまとめたものであり、政治動向の予測などでは、現時点では著者の予測が必ずしも当たっていないものもあるが、これらの記述も当時のままに再現してあるのは、著者の自分の著作に対する責任感の強さとして好感できる。

読み終わって、日本社会の不正義、不合理に対する怒りを著者と共有することは出来るが、確かにその怒りの持って行き場に困ってしまう。社会変革の道はまだ尚遠しということなのだろうか。

(発行99年3月)