日本の領土田久保忠衛 PHP研究所

フォークランド紛争の際にサッチャー首相はこの戦いを「フォークランドの人々よりも重要な国家としての名誉を守るため」の戦いであると述べた。そもそも、国家とは何か、その成り立ちを考えた場合には、領土がその根幹にあるという概念が日本人には希薄だ。現在日本は北方四島、竹島、尖閣列島という領土紛争を抱えているが、それぞれが、歴史的にも国際法上も、明確に日本の領土であるにも拘わらず、政府も民間も紛争相手国の理不尽な主張や、侵犯行為に対し、事勿れ主義の対応に終始している。この様な態度をとり続けるならば、領土は次第に外国の手により侵食され、かすめ取られていくし、その結果、日本は自主独立の精神を失ったいくことになると著者は主張するが同感だ。本書は、決して感情論に流されることなく、地図、年表、あるいは過去の条例、条約を提示して、北方四島、竹島、尖閣列島の領有権が日本に帰属していることを解説し、又、紛争相手国の論拠などにも懇切丁寧な反駁の根拠を示している。国境紛争の解決には国際司法裁判所などの調停方法があるが、これらの国際調停では負けることが明らかなので、調停に同意せず、一方では不法にそれらの領土を占拠し、実効支配実績を残そうとする相手国に、日本はどの様に対処すべきか。色々考えさせられた。

（99年2月）