日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ？

ターガート・マーフィー／エリック・ガワー毎日新聞社

日本の貯蓄率は世界一高く、一人当たりの預金額も群を抜いて多いにも拘わらず昨今の景気低迷の中で、人々は失業の不安や、老後の不安から自分達は貧乏だと思っている。一方アメリカでは、人々は定年が一刻も早くくることを楽しみにして、実際豊かな「お金持ち」の定年後の生活を送っている。なぜだろうか。日本在住が長い著者のご宣託は、日本人が超低金利の（現在ならば年率0.35%）貯蓄しかしないで、株式投資を怠っているからだという。10万円を今の金利で郵貯に預けても50年後に11万9千円にしかならないのにくらべ、インデックスファンドのNYダウに投資した場合、過去の実績から年率２０％の値上がりをしているから、50年後には９億1000万円になるはずだという。しかし、このような投資を日本の株式市場で行うことは危険過ぎるとも著者はいう。日本の株式市場の仕組みが実はインチキのまかり通る「偽物の市場」だからだという。これらの視点を分かり易く説いてくれるから、初心者にも日本経済の早分かりという意味でも面白い。経済評論家としての、著者の日本の市場構造の欺瞞性に関する分析は明解だ。

さて、「私はこうして金持ちになった」式のハウツーものである本書のアドバイスは、米国市場での株式インデックスファンドを収入の１０％づつ毎月買い続け、決して売らないことだという。インデックスファンドの実績は、9割のプロのファンドマネージャーの運用実績にも優るという実績があるというのがその根拠だ。又、株式ブローカーを通しての株式投資は手数料を取られるだけで勧められないともいう。これは、かつて、証券会社の言う通りに投資信託の買い替えばかりやっていて、結局、幾らの利益も上げられなかった経験をもつ日本の一般投資家にとっては、分かりやすい話だろう。従って、著者はこのインデックスファンドの取引を、E-TRADEを使ってのインターネット投資で行うことを勧めている。

この通りの投資を行えば、計算上は著者のいう通りの実績が上がり、確かに50年後にあなたは大金持ちになれるかもしれないが、この手のハウツー物の例の通り、本当にこのような投資を実践できる人がどれだけいるだろうか。しかも、金持ちになれるかどうかの結果が出るのが50年後では、やはり絵に描いた餅だろうか。

(99年3月発行)