現代日本経済論奥村洋彦東洋経済新報社

ガルブレイスの名著「バブルの物語」は、バブル発生のメカニズムを、人間心理学的に又、経済理論的に解き明かしたものであり、その読みやすさ、分かり易さなどを総合的に織り込むならば、おそらく、バブル研究においては、これを超える著書は当分出ないのではないかと思われる。しかし、日本で87-90年に起き、そして91年以降に崩壊したバブルについて、ガルブレイスの「バブルの物語」をどのように当てはめたら良いのかといった分析は、未だ殆どなされていないとも言える。本書は、この日本のバブルの生成と崩壊の過程を改めて、研究しようとこころみたものだ。基本には、ケインズ・ミンスキーによる、バブル理論に、日本のバブルを当てはめようと試みられているが、同時にバブルの生成と崩壊を「資産デフレ」を基軸に解き明かそうとする、「フィッシャーモデル」をも紹介しているなど、最終的な結論を引き出しているとは言い難い。日本のバブルを解き明かすという究極の目的は、多分そんなに容易なことではないのかもしれない。しかし、ガルブレイスの「バブルの物語」に戻って、日本のバブルを当てはめてみると、殆どの現象は符合することは驚くばかりで、日本のバブルも歴史上で数多く起きたその他のバブル経済と、それ程異質なものではないことが実感される。その意味合いからすると、本書は、労作であることに疑いはないものの、それでもガルブレイスの著作に比較すれば、バブル研究の面での目新しさは感じられないとも思えてしまう。

（発行99年05月）