新マーケットの魔術師 J.K. シュワッガー同友館

先物相場というものは江戸時代、大阪の米相場が始まりといわれている。その時から数え切れない人々が、この相場にかかわり、又その大部分が相場に負けて大きな財産を失い消えていった。相場と博打はどこが違うのかといわれるが、実際の違いは世間でいわれる程大きくはないかもしれない。その為に、トレーダーといわれるこのような相場の中で一攫千金を夢見る人達の９９％は最後には、損失に耐え切れなくなって消えて行く。しかし、ここにスーパートレーダーといわれる、勝ち組みのトレーダー達がいる。彼等は、長年にわたり博打ともいわれるこの相場の世界で勝ち続けるのみではなく、巨万の富を築いて来た。このようなスーパートレーダー17人と著者がインタビューを通じて、どうしたら、彼等のように相場に勝ち続けることが出来るのかを明らかにしようとしたものが本書である。しかし、本書は決して、相場で勝つ為のハウツー物ではない。結論を先に言えば、どの相場師も相場に絶対に勝てる普遍的な方法などないと言っている。しかし、それぞれが、自分にとって必勝のパターンを生み出している。それは、教わるものでもなければ、教えられるものでもないという。又、自分に自信を持つこと、過ちを認める勇気を持つこと、忍耐の大切さ等も、皆指摘するところだ。即ち、相場に勝つという方法が、実は人生訓にもつながっているところが実に面白い。従って本書は、相場という魔物の世界で、生き続ける17人が人生観、あるいは人生哲学を語ったものともとれる。本書に取り上げられたトレーダー達へのインタビューは1990年の前後に行われており、それ以降のトレードの動きを反映したものではないし、恐らくこの中の何人かはそれ以降相場から消えていったかもしれないが、ここに語られている相場という魔物に対する人間の知力と意志という構図は、今も変わるものではないとおもわれる。事業での成功を目指す人、相場で勝ちたい人、博打で勝ちたい人にとって、本書はきっと良いヒントになることだろう。

（99年3月発行）