シボレーサマーボブ・グリーン TBSブリタニカ

ボブ・グリーンのコラムはシカゴトリビューン紙の看板といっても良いものだ。彼がコラムを書き始めてから既に25年が経つというが、評者もシカゴ駐在時代には毎日楽しみに読んでいたものだ（ありがたいことに、最近はインターネットで日本にいても毎日読むことが出来るが）。本書は最近のそのコラムから珠玉の作品を集めたものだ。ボブ・グリーンは1947年生まれだが、彼のコラムはアメリカのベビーブーマー達の世代の意見を色濃く反映したもので、同世代の日本人にも共感を得られるものだ。高校生の時に父親に買ってもらった、ヨセミテイエローのフォード・ギャラクシーを乗り回した楽しい想い出を持つ中年男がいる。その車は彼がベトナム戦争に行っている間に人手に渡ってしまった。その後の彼の人生は順風満帆という訳ではなかったが、47歳になったある夏にひょんなことから、この60年型のギャラクシーと出会い買い戻すことができた。このヨセミテイエローのフォード・ギャラクシーを運転すると彼は一気に高校生時代の自分に帰る。そして数十年ぶりに高校生時代のガールフレンドであった、今の妻をドライブに誘って昔の夢を取り戻す。そんな話しが溢れている。暴力が溢れ、人々が優しさを失ってしまった現在のアメリカに対する、ボブ・グリーンの嘆きや怒りも共感を呼ぶ。しかし、ボブー・グリーンは嘆いているばかりではなく、まだまだ自分達の回りにはアメリカらしさが多くあることも教えている。

かつては、明け方に来る牛乳配達は、家人を起さないように、その家の鍵を預かって、その家の冷蔵庫を開けて不足している品物を足していくという信頼感があったというが、今でも、何軒かの家の鍵を預かって、昔通りに人々の信頼を得て配達をしているミルクマンを見つけたことを、彼は実に楽しそうに描いている。

アメリカの良識あるベビーブーマー世代が何を考えているのかを知ることが出来るし、清々しい読後感がある。

(99年7月発行)

　

　