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金融政策の有効性黒木祥弘東洋経済新報社

実体経済の動きに人為的に何か変化を与えることが出来るかという疑問には明確に答えることは出来ないだろう。それは、余りに変数の多い実体経済に、ある一定の人為的な政策が与えた影響を検証することが実際上は極めて難しいからだ。本書はそのような経済の中でも、金融政策という点に絞り、金融政策がどのように、日本経済に影響を与えて来たかを検証したものであり、対象となっている期間は所得倍増計画の60年代から最近に至る極めて長期なものである。勿論金融政策の影響が現れるのは、その第一次的分野のみではない。例えば、金融政策が銀行信用の拡縮に与える影響がどのようなものであるかを検証し、更に、銀行信用の拡縮の中小企業の投資行動に与える影響を検証するというように、いわば「風が吹けば桶屋がもうかる」の類の、波及ルートを逐一検証していくという作業をしていかなければならない金融政策の有効性は検証出来ないのだが、本書はそのような試みを丹念に行っている。どちらかと言えば純学問的な検証であって、その真摯な分析には脱帽するものの、さて、それでは本書の検証の結果を、今後の金融政策にどのように役立てていって良いのかは言及されていない。典型的な経済学者の論文という事が出来よう。

（99年6月発行）

　