マーケットパワー島田晴雄 PHP研究所　

97年に著者が表した「日本再浮上の構想」は９４年から９６年にかけて著者が参画した日米共同研究プロジェクト「ジャパンビジョンプログラム」での報告をもとにして日本が抱えた問題を実に広範囲にわたって丁寧に分析し、それらの諸問題の解決の糸口、方向を提示するという極めて意欲的な書であった。この時も著者の、金融、財政、通貨、地球環境、経済構造等々実に多岐にわたる知識と、何よりも実証に基づく処方箋に新鮮さを感じたものだ。本書も、前著と同様に広い知識と実地に裏打ちされた包括的な分析という意味の好著である。副題に「日本経済再生の鍵」とある。本書における著者の主張は、公的な経済支援策が息切れしない内に、何しろ民間の活力をつけないといけないが、その為には、実は存在しながらも眠っている需要を喚起する努力を各企業が行う必要があり、それはとりもなおさず、顧客のニーズを如何に掘り起こすかであると力説されている。この、主張を現在、ニッチな分野といえども世界のトップ企業となっている活躍している企業、あるいは、ベンチャーとして成功している企業の実例などをあげて説明しており、指し示された方向は明確である。建設業、タクシー業界などの従来、規制に守られて来た業界を再活性化はどのようにしたらはかれるかといった問題も含めて、幅広い提言は大いに参考になる。

(99年5月発行)