金融工学の悪魔吉本佳生日本評論社

デリバティブとは何かを勉強しようと、様々な書物に当たり、ブラック・ショールズモデルの高等数学の式に突き当たったところあたりで、これは駄目だと諦めた人も多いだろう。35歳までの頭脳でなければデリバティブにはとても追いついていけない世界であるとの話しがまことしやかに言われるから、やはり、デリバティブやら、ポートフォリオー理論を理解するのはやめて、専門家に任せようという経営者も多いようだ。こういう会社がいつの間にかたった一人の「専門家」と称する人間の相場の失敗によって、とんでもないロスを被ることになった例も少なくはない。本書は、デリバティブを理解するのは、そんなに難しくないという観点から書かれており、ブラック・ショールズモデルなどを使わなくとも四則演算によって、デリバティブの仕組みは理解可能であるというまことにありがたい本である。

勿論、この本の解説によってデリバティブを駆使する財務担当になれるという訳ではないが、要するにデリバティブとは、難しいことを言ってはいるが、こんな単純なことだったのかといった程度の知識は得られるから、デリバティブ恐怖症は幾らかでも解消することが可能かもしれない。

デリバティブの仕組みがわかって見ると、デリバティブの本質は、将来予測に賭ける投機であることとか、投機であるだけに絶対的な必勝法などないことが理解できるだろう。更には、世の中にはデリバティブの知識がない人が多いことを良いことに、詐欺すれすれの騙しまがいの金融商品が溢れていることなどが分かってくるだろう。

（99年9月発行）