断絶の時代Ｐ．Ｆ．ドラッカーダイヤモンド社

今から30年前の1969年に出版された本書は、日本ではその年のベストセラーともなり、「断絶」という言葉は流行語にもなった。その著書が何故、今新版として発行されたのか、いささか不思議な気がしたが、紐解いてみて納得が行った。それは、本書に著されている様々な、｢断絶｣の事象が今も続いているどころか、益々深まっていることに気付くからだ。断絶とは文明と社会の根源的な変化であると著者は言う。その断絶は主に四つの分野で起っていると指摘されている。すなわち

新技術、新産業の出現

グローバル化と南北問題の顕在化

政治と社会の多元化

知識社会の出現と社会的責任への意識の高まり

である。１．についは、特に経済好調と言われる米国において、情報産業などの新規産業や、マイクロソフトなどのベンチャー企業が経済社会にいかに重要な役割を占めているか考えればまさにその通りである。２．については国家とか国際化という概念を飛び越えて、今日の世界がグローバル化、一体化に進んでいることからしても、３０年も前にこの事態を喝破した著者の慧眼に驚く。３．も、今や情報の発達により、様々な組織が社会の構成要素となっており、例えば国家権力にかわってNPOなどが実質的に社会組織として機能しはじめていることに当てはまる。４．はも現在の知的産業革新のことを示しているのだろうか。

いやはや、これだけの予見を３０年前にしていたことには、驚かされる。現代を分析する上で、本書を読み直してみることは、十分に意義のあることといえるかもしれない。

（９９年９月発行）