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ボロ儲け経済学青木雄二光文社

　

「ナニワ金融道」というマチ金の世界、ゼニにかかわる裏話のマンガで大ヒットをとばした著者は、それで一財産つくったことで、これ以上あくせくマンガを描いて稼ぐ必要なしと、仕事を止めて、ベンツを買い悠々自適の生活を送っているという。それでも、講演依頼やら執筆依頼が殺到しているようで、本書は「ゼニを持っているから誰に遠慮もいらない立場」からナニワ金融道依頼の著者の金銭にまつわる世の中の矛盾を鋭い舌鋒で切りまくったものだ。

先般商工ファンドの借金取り立てが、「腎臓を売ってカネ返せ」と迫っている録音テープが公開されて話題になったが、本書には、その様な取り立てがあることは既に述べてある。正に、金融というもののナマの姿をしっかりと暴いていると言える。

著者の基本的な哲学はマルクス主義の指摘した資本主義の矛盾が、絶対的な真理であること、又、唯物史観こそが正しいという、今時は中々珍しいが、実にすっきりしたものだ。このような視点から現在の日本社会をみるならば脳死による臓器移植も、将来的には金持ちが貧乏人から臓器を買える世の中になると下準備だと喝破出来るし、金融機関への公的資金投入とは、無責任な銀行経営者が、国民の金を掠め取ることだと断言する。

社会のヒエラルキーは資本家という搾取者と非搾取者の労働者で成り立っているという、マルクスのご宣託をそのまま、現代に当てはめて見てみるのも中々面白い。

勿論、今やマルクスの時代にいた典型的資本家も、労働者もいないように見えるがこういう見方をすれば、100年前の理論も全く役に立たないともいえないという気がしてくる。ところどころに、著者得意のマンガを入れて、気軽な読み物になっている。

（99年10月発行）