「強国」論 D.S.ランデス三笠書房

経済歴史学的に振り返り、様々な国が何故「勝者」となり、その条件を持続できたか、あるいは没落していったかを検証するという作業は、様々な形でなされているが、文化人類学をも絡めて、この種の研究を行うと様々な発見がある。

又、その歴史的教訓に、将来の「勝者」であるため、あるいは「勝者」であり続けるための教訓をくみ取ることが出来るかもしれない。

本書はハーバート大学の歴史学教授の著者が、この1000年間の「勝者」のパターンと、又、所与の条件は当然「勝者」になっても良いものをそなえていなかがら「敗者」の側に甘んじてしまった、たとえば中華帝国、イスラム帝国、共産主義圏諸国などについて分析を行ったものだ。

戦国時代から明治維新を経て世界有数の経済大国となった日本についての記述にもかなりのページがさかれており、そんなに的外れでもないから、著者の造詣は相当なものなのだと思わせる。

原題は’`The Wealth and Poverty of Nations’(Why Some Are Rich and Some So Poor’ とあり、まさに、イギリス、米国、日本などが何故成功し、アフリカなどが何故貧しいままなのかの分析なのだが、何故か「強国」論などという意味不明のタイトルになってしまったのは、内容が濃いいだけに惜しまれる。

（00年1月発行）