知識経営のすすめ野中郁次郎･紺野登ちくま新書

「知価社会」という言葉が最近とみにいわれるようになって来た。これからの、社会は、「知識」こそが価値を生む源泉になるという考え方だ。

さて、それではそもそも「知識」とは何であるのか、あるいは、具体的に「知識」が価値を生むシステムを企業が取り入れるためには、どうしたら良いのかを解説しようというのが本書である。

今までの社会で、「知識」が決してないがしろにされていた訳ではないが、企業においては、財産ともいえる様々な「知識」の内で、可視化され、共有され、蓄積され、利用されるという例は、決して多くはなかった。

これを、あらためて体系化しようというのが、「知識経営」である。その意味では、決して目新しいコンセプトではないから、具体的な例をあげての解説を読み進むと理解はかなり容易である。

問題は、本書に掲げられた「知識経営」を具体的に、個々の企業に取り入れていくための各論は、それぞれの企業のおかれた環境などによって、千差万別ではないかと思われる点である。

この部分は、結局は各自の企業で推し進めて行くしかないのだろう。

（99年12月発行）