アメリカ･ユダヤ人の経済力佐藤唯行 PHP研究所

アングロサクソンが長く、覇権を握っている世界において、非アングロサクソンで目覚ましい地歩を築いているのは、ユダヤ人であり、それより大分遅れてはいるが日本人もアングロサクソンにとっては、一時は脅威といわれた。

そんな意味で、ユダヤ人論は日本人も中々好きな論議だが、本書は、アメリカにいるユダヤ人、しかもその経済力の実体をいう、範囲に絞ってのユダヤ論が展開されている。

著者によれば、アメリカ・ユダヤの経済力については、「ユダヤ人はアメリカ経済の中の幾つかの周辺的かつ未成熟な産業分野を支配していたに過ぎない。主要産業については、ほとんどこれを支配しておらず、とりわけ銀行業においては、小さな役割しか果たしていない。ユダヤ人の中には確かに金持ちは多いが、トップクラスの大富豪の中にはユダヤ人はほとんど存在していない」という「通説」があるという。

本書は、この「通説」がユダヤ人側が、自分達の経済力につてい過小に提示しつづけてきたために作られた虚像であり、いかにユダヤ人の経済力が、実社会に隠然たる力を持っているかを、具体的に例証して行く。

又、特にホローコーストの生き残りのユダヤ人に、成功者がなぜ多いのかなどを含めて、WASP社会の中でユダヤ人が成功していく背景を読み解いて行く。

現実に今アメリカを動かす大きな原動力になっているユダヤ人について知っておくことは、正に世界を動かすパワーについて知ることになるともいえるのではないだろうか。

（99年9月発行）