物理学の世紀 佐藤文隆 集英社新書
我々を取り巻くありとあらゆる種類の物理学の謎は20世紀に入って、物理学の著しい進歩によって、次々に解かれようとしている。しかし、一つの謎が解けるとその先に更に謎が浮かび上がるといった形で、未だ未だ究極の解明理論（GUT）に至る道は遠いといわざるを得ないようだ。
物理学におけるGUTは、恐らく哲学を含む、あらゆる分野において残されている謎を解くものにもなる可能性は高い。それは、宇宙の始まり、あるいは原子の構造、遺伝子の二重螺旋、エネルギーの本質といった謎が、何れもその答えにおいて共通項を持っているのではないかと予感させる様々な事象を、20世紀の物理学が示しているからだ。
本書は日本物理学界の会長でもある著者が、その物理学に限定されない多様な知識をベースにして、アインシュタインの相対性理論と、量子力学を中心にして大きく進歩した20世紀の物理学の歴史、各理論の要約を解説しつつ、物理学の今後、哲学の今後を語るという意欲的なものである。
「統一ゲージ理論」、「超弦理論」、「繰り込み理論」などの名前だけは聞いてはいても、触れたこともない物理理論についても簡潔ながら解説されている。但し、それを、理解できるかとなるととても無理だが、少なくとも物理理論の方向性だけは見えてくるから、何だか得をしたような気分にもなれる。
（99年12月発行）