マンデルの経済学入門ロバート･マンデルダイヤモンド社

「マンデル・フレミングモデル」あるいは「最適通貨圏理論」の功績により99年のノーベル経済学賞を受賞したロバート･マンデルが６０年代に執筆し７１年に「人間と経済」という邦題で出版された経済学を易しくかみ砕いて説明した入門書の復刻版である。

経済学の基礎となる理論、例えばアダム・スミスに始まる古典派経済学と、ケインズ理論のそれぞれの特長と欠陥といった点、財政政策、金融政策とは何を意味しているのかといった点を、身近な例を掲げることによって、初心者にも理解できるように解説したものだ。

マンデルによれば、「経済学の原理は人間の生活の隅々に適応できる」という。そのような主旨から、「収穫逓減の法則」を持ち出して一杯目のビールが美味い訳に重ねたり、人間が数多くの生物の中でもっとも繁栄を得たのは「知識」という「比較優位」を持ったからであるといった説明は、気軽な読み物としても面白い。

マンデルの言うところは、経済学理論というものは、決して理解不能な複雑怪奇なものではなく、寧ろ、極めて当たり前の事象を理論化したものなのだということなのだ。

その意味でノーベル賞受賞の理由となった「最適通貨圏理論」すなわち、「世界は一つの通貨に統一されておれば、（世界統一政府の）財政政策は思った通りの効果を上げるはずだ。」という理論が、余りに当たり前過ぎて、何故こんな理論がノーベル賞なのかと不思議に思ったことを思い出した。

成る程、数量経済学と称する一連隊が経済学を複雑怪奇にするとともに、その地位を貶めてしまったのではないかとも思える。

（00年1月発行）