年金の教室 高山憲之 PHP新書
先頃、年金改革法改正案が国会を通過したが、この議論においても与野党の賛否は真っ二つに分かれた。そのような中で、年金に対する国民の不安は、一向に解消せず、若い世代の中には、自分達が老齢に達した時には年金制度は破綻しているだろうと信じ、その為に国民年金の不払い者の数がうなぎ上りに上昇するといった事象を招き、それが又、国民の年金不安を増幅するという悪循環が起きている。
しかし、本書によれば、これらの年金不安の大部分は、年金を支える基本的な仕組みに対する人びとの誤解に基づくものだと、その誤解点を細かく解説している。まさにタイトル通りの｢年金の教室｣である。
基礎年金部分の税方式化、平均寿命の伸びに合わせ保険料拠出期間の延長といった組み合せによって、国民皆保険の理想的状況が、スムースに可能になると、具体的な改革案を示しながら解説している。
高齢者に媚びを売る為に、政治家は年金改革に対して及び腰であるが、自分達の子や孫の世代に年金が破綻するような負担をかけてまで、自分達の受給を確保しようと利己的に考える人は少ないと、本書は指摘している。
この様に、年金の仕組みそのものに限らない、人びとの社会意識の分析までを含まなければ、本当の年金制度改革は不可能であることからやはり、年金問題は難しい。
(00年2月発行)