じみへん⑥　　　　中崎タツヤ　　　　　小学館　　　　　　　　　

中崎タツヤの漫画「じみへん」に最初に出会ったのは、今からも6-7年も前の米国駐在中のことであったと思う。

下手な絵、という印象などは吹き飛ばししまうほどの、奇妙な面白さと、共感を生む生活感とか、人生観というものに物凄い衝撃を受けた。良い歳をしてとは思っても、マンガを読んで、涙がでるほどに可笑しく笑ったことを思い出す。

それから何年振りかで、本書「じみへん⑥」を読んだ。かつてのパワーの残光はしっかりとあって、奇妙な可笑しさは変らない。又、泣くほど笑う部分も多い。

しかしながら、7年前のあのパワーは確かに減少していると思われる。かつて、ハングリーというか、破れかぶれでぎりぎりの面白さを居直って表現していたこのマンガ家も、それなりに地位と名声を得て、ハングリーさを失い、手馴れた自分のパターンをこなしているという感じがしないではない。

最初のころ使っていなかった、下ネタものが多いのは、この作者の束縛を受けないという姿勢を表しているという評価よりも、禁じ手を使っているという、逃げの姿勢に見えてしまう。

実に面白いマンガであったし十分満足したが、多分もう二度と「じみへん」の続編を読むことはないだろうという気がする。

（99年6月発行）