出井伸之のホームページソニー・マガジンズ編・発行

創業者である、井深、盛田氏といい、現在の出井社長といいソニーをソニーたらしめているのは、この組織を形作る人びとの豊かな個性、自由な発想と、その個性を育む企業風土ということが出来るだろう。

このような自由な風土が、豊かな発想を生み、企業として成長して、更に自由で豊かなソニーを作るという好循環は、羨ましい限りではある。

本書は出井社長が、国内外向けに社内イントラネットの社長ホームページにおいて、97年から約3年間、自由気ままに社員に対して伝えた、日記風、エッセー風の記事と、それに対する社員からのメールを再録したものだ。

社長メッセージとは言え、これは決して社長からの社員への檄といった類のものではなく、同じ組織の一員、仲間としてのメッセージである。

その中には、出井社長の趣味の披瀝があったり、出張の際の経験談、友人との交流の記録といった、実に温かい内容になっている。

社長と内外のソニーグループの2万人が、このホームページで繋がり、社長が何を考えているかに親近感を抱けるし、時には社長に対して提言も出来るというのだから、ITの発達が、組織の文化を変える時代になったことを実感する。

上意下達のみが、長く組織のコミュニュケーションの唯一の流れだったが、このようなウエッブがどんどん伸展して行く流れは、何もソニーに限らず、一般化して来ることは間違いないだろう。

更には、社長から社員向けへのホームページだけではなく、組織の全員がそれぞれのホームページをもって、発信していく時代にもなるのではないかという予感すらある。

（98年3月発行）