ヘッジファンド＆リスク ウィリアム・クレレンド ラジオたんぱ
一時期ほどのにはヘッジファンドの脅威が語られることも少なくなってきた。LTCMやタイガーマネージメントの凋落といった事実から、ヘッジファンドといえども、巨大なマーケットの圧力の前には一般のプレイヤーとそれほどの大差がある訳ではないという認識が広まった所為もある。
本書は、長年にわたり投資コンサルタントとして活躍して来た著者が、ヘッジファンドとはそもそも何かという基礎的な面、技術論から、一体ヘッジファンドを運営している人達とはどんな人達なのか、ヘッジファンドに投資して儲けようとするならば、そういうファンドマネージャーや、パートナーを相手にしてどんなことに気をつけなければいけないのかといった、人間臭いところまでを語ったものだ。
本書の人間臭い面に触れたところなどを読むと、冒頭でも触れたように、あの恐ろしげなヘッジファンドといえども、マーケットという魔物の前では如何に無力なものかと思う。
投資と投機の違いは大きなものではない。投資や投機の基本的な動機は「金を儲けたい」という人間の欲望以外の何物でもない。そうであるならば、その一つの形であるヘッジファンドが、如何にも人間臭いものであるのは当たり前のことといえるだろう。
善良なカリフォルニアの年金受給者達の年金ファンドがヘッジファンドに投資をし、そのヘッジファンドの猛威が、アジアの小国の経済に破滅的な打撃を与え、結果その国の国民の生活を苦しめる。
こういった普通の人の欲望に起因する経済連鎖こそが、現代のマーケットと言われるものの実体だとすると、なんとも切ない気持ちになってしまう。
（00年6月発行）