ネットビジネス戦略入門 パトリシア･シーボルト 翔泳社
ネットビジネスの世界進展の早さはドッグイヤーと言われるスピードで進んでいる。従って、関連書籍のいわゆる賞味期限も決して長いものではない。それだけに、米国でのネットビジネス関連書籍としてベストセラーであった本書の発行が９８年１１月であり、日本語版が９９年７月だから、現時点で読んでみるといささか的外れな指摘も気にならないではない。
しかし、本書を通じて著者の言わんとしている基本は多分今も凡そ受け入れられている事柄だ。
すなわち、ネットビジネスの成功は「顧客重視」に尽きるということだ。著者は、先ずネットビジネス成功の８つの原則として
1. 適切な顧客を狙う
2. 顧客の振る舞いを総合的に把握する
3. 顧客に影響を与える業務プロセスを合理化する
4. 顧客との関係を広い視野で捉える
5. 顧客に主導権を与える
6. 顧客の業務を支援する
7. 個別化したサービスを提供する
8. コミュニティーを育てる
をあげているが、ネットビジネスの成功事例として、アマゾン、ハーツレンタカー、ウェールズファーゴ銀行１６の団体、企業のネット化の例を上げて、上記の８つの原則がどのようにして実現されていったかを解説したものだ。
本書発行以後に、アマゾンを始めとして、ネットビジネスの先行きに不安をささやかれる企業も出てきていることを割り引いたとしても、「ネットビジネス」とは従来型のプッシュ型ビジネスを、顧客中心のプル型のビジネスに変えるものであるというコンセプトは十分伝わって来る。
米国におけるネットビジネスの成功事例が、ビジネス習慣や、顧客行動に違いのある日本においてそのまま演繹できるかについてはやや疑問もあり、その点では翻訳物のこの種の書籍がアップツーデートでないこととが本書のもう一つの難点ではあるが。
(９９年７月発行)