ネオIT革命　　　　　　米倉誠一郎　　　　　　講談社　　

アメリカがIT革命によって空前の好況を謳歌し、寧ろ、そろそろそのピークは過ぎたのではないかとも思えるネットバブル崩壊による企業の倒産などが出だしているというのに、日本はこの分野では米国に遥かにおくれており、まだまだキャッチアップも難しいともいわれるのは何故なのだろうか。

本書では米国におけるIT革命の成功の背景、例えば、失敗を恐れない起業家精神とそういった起業家達を支援するシステム、あるいは社会的にもそういった開拓者達を応援しようという国民性といったことであると指摘しつつ、日本ではどうかというアプローチを行っている。

何でも駄目な日本ということではなく、日本でも米国におけると同様なIT革命推進の萌芽が数々あることを、具体的な事例を上げて紹介しているが、その意味では日本の将来に希望が持てると明るい気分になれる。

著者によれば、インターネット技術の活用で米国に遅れをとった日本は、遅れたからこそ、Iモードなどの携帯のインフラを駆使することが出来、米国のPCベースのインフラに比べて、第二期のＩＴ革命で優位に立つことも可能だという。

又、日本の工業製品などで実証されたこまやかな技術ベースと、少資源国であるが故に発達している環境技術を駆使することで21世紀において再び世界のモデル「モデルＪ」になることも出来るという。

IT革命の方向性は、いまだもって明確ではない。十年先のITはどのように利用されているのか、あるいは経済はどのような仕組みに変化しているのかとなると、正直皆目見当もつかないというのが本音ではあろう。

そうではあるものの、本書のような日本楽観論は読んでいて愉しくなるのは事実だ。

（00年6月発行）