インターネットの経済学 佐々木スミス三根子 東洋経済
IT化は革命なのか、革命といえるほどのものではないのか。ITによって生産性の上昇は見られるのか見られないのか。あるいは、ニューエコノミー論には果たして根拠があるのかないのか。これらの疑問は、急激に進むIT化とそれにともなう社会変化という未曾有の事態に直面して掲げられた、経済学的な命題であるが、何ともお粗末ともいえるほどに、明確な回答は得られていない。如何に、この新事態に関する経済学の戸惑いが深いかということなのであろう。
それは、逆にいえば、このインターネット経済学と言われる分野が、経済学にとって如何に興味深い問題であるかということの裏返しでもある。
おそらくこのような興味からであろう、経済学が直面した課題について、コロンビア大学の客員研究員である著者が、米国の著名な経済学者10人にインタビューしたものが本書である。
ミルトン・フリードマン、ボール・デビット、レスター・サロー、ケネス・アローと実に早々たるメンバーとのIT経済学を巡る討議は興味がつきない。
新古典派の重鎮であるフリードマンはITの広範な広がりは、徴税を困難にさせ、政府の権限を縮小するから大歓迎であると、流石古典派の理論を展開する。
それぞれの経済学者の見解が、それぞれの、今までの経済理論を反映したものであって面白い。
結論を求めた書ではないが、何となくインターネット経済学の容貌が浮き出て来る。
（00年10月発行）