戦略的システム構築　　　　　栗山馨　　日経BP　　

企業経営の目的は、経営を効率化しより多くの利益を上げることであるとするならば、IT化こそが、企業競争の根幹であるといわれる現在において、ITを活用したビジネスチャンスの拡大、利益追求、コストの削減は最重要視されなければならない。

即ち、企業にとっては、最適のシステムを効率よく構築することこそ、その死命を制するキーであると本書は主張する。

ところが、システム構築の重要性は理解できても、多くの文献は、専門分野、技術論にかたむきがちで、初歩的な解説には乏しく、又、システム構築の全体像を捉えたものは少ない。

本書はその点、全くの初心者に対し、コンピューター、ネットワークの初歩的技術論を説くところから始まり、一気に、これからのシステム構築は「Web・アプリケーション・サーバー」が主流になるという予測のもとに、この方式によるシステム構築の概念を解説している。

企業のシステム設計は、この20年ほどの間にも、ホストによる集中型、UNIXやNTサーバーによる分散型等々と、その思想も技術も変遷している。それぞれに長所もあり短所もあるとするならば、これからのｅ化社会における最適なシステム設計の基本は何になるのかは、簡単なようでいて中々の難問ともいえる。

本書は、インターネットという地殻変動的な情報革命手段を、企業経営システムに最大活用することこそ、未来型の最適システムであると説いている訳だが、納得させられるところは多い。

ただし、旧システムから未来型システムへの移管をどのように効率的に行うかなど、理想に至る過程には、各企業とも問題を抱えているとも言えよう。

その点、本書は具体的なシステム導入事例紹介を行っており、システム構築という概念と実践例は簡潔に理解できる。

本書は、基本的には富士通のInterstageというWeb・アプリケーション・サーバーのプロモーションのために書かれたものだが、そのような、動機は抜きにして、システム構築についての知識を簡潔に得られるから、中々有益である。

（00年10月発行）