長嶋はバカじゃない　　　　小林信也　　　　　草思社　　　　

テレビ番組で、間違いなく視聴率を稼ぐためには、「長嶋物」に限るらしい。テレビ番組に限ったことではない、雑誌も「長嶋関連特集」があれば部数は増える。

繰り返し語られる、長嶋語録、長嶋伝説、長嶋ジョークに人々は飽きることがない。それは、あたかも、日本人の多くに、長嶋好きの遺伝子が組み込まれているかのようだ。何故、長嶋なのかの分析をすれば、現代の日本社会が、理解できるかもしれない。

評者自身も、盲目的といって良い長嶋ファンだけに、本書のタイトルは気に食わなかったが、結局、買ってしまったのだから、著者か出版社かしらないが、長嶋物の売り出し戦術にまんまとはまってしまったのかもしれないが。

2000年の日本シリーズを一戦毎に追うことで、采配能力がないとまで言われる長嶋が、実は、非常に優れた指揮官であるという、長嶋ファンが喜びそうな結論に導くという、多少は、あざといともいえる趣向である。

まあ、野球の解説などというものは、結果論で言えば何でも言えるという典型のようなものであって、本書の主張が、正しいとか間違っているとかいう類のものではない。

長嶋好きが、思わず買ってしまう類の本であり、それなりの、長嶋賛美に多少の満足を得るといったところだろうか。

（00年12月発行）