アメリカ信仰を捨てよ　　　　石原慎太郎　　　光文社　　　

核装備を持ち、日本の主要都市に照準を合わせたミサイルを数十発持つ中国が、日本の防衛のみならず、政治発言、教科書問題にまで一々口を挟んできても、それに迎合するかのような発言を繰り返す日本人は多い。

NTT接続料値下げ要求も、アメリカが日本の消費者のために、声高に日本政府に外圧をかけていると思っている日本人もまた多い。

共に、中国や、米国が深謀遠慮のもとに、それぞれの国にとって、何が国益かを考えた上での発言であるにも関わらず、そのような真意が全く読めない、お人好しを通り越した迎合的亡国発言であるというのが著者の主張だ。

中国の発言は、日本に対する核優位を保ち、中国の覇権を確立するためのものであり、後者は、米国経済が、日本経済の発展を極力押さえ、自らの優位を保つためのものなのだ。

このような形で蔓延する、いわゆる「アメリカ信仰」とそのコインの裏側である「自虐的日本観」を、何時もの石原節で叱るのだが、タカ派とか、右翼といったレッテル貼りによって、著者達の言動を封殺しようとする、内外の諸勢力の方こそ、余程、常軌を逸していると思えてくる。

著者の怒りは、アメリカや北朝鮮や、中国に向けられているように見えて、実は、そのような言説や行為に対して、妥協的、容認的である日本人に対してこそ向けられているといえる。

日本は、矜持をしっかりと持ち、その伝統を重んじておれば、技術力においても世界の最先端にあるし、資金力も豊富であるから、世界のトップにもなれるのだという檄は、中々小気味良い。

多少、過激な発言ともいえる部分もあるが、これだけの、発言を堂々と行える政治家が、著者の他に一体何人いることだろうか。

（00年11月発行）