チーズはどこへ消えた？　　　　S･ジョンソン　　　扶桑社　　　　　

全米でそして日本でベストセラーになっている本書は、ごく短い一つの寓話である。この寓話の意味するところが、変革に対して挑戦して行こうというメッセージなのだとということで、米国の一流企業が社員研修のテキストに使ったりしているという。

ストーリーは世界を迷路に、そして人々が人生において求めるもの、愛なり、金なり、健康なり、生甲斐なりを、チーズに例えた寓話だ。

スニフとスカーリーという2匹のネズミと、ヘムとホーというネズミサイズの小人二人が、迷路の中でチーズを求める。ネズミと小人ではチーズを求める方法も違えば、チーズを見付けた後の行動、一旦得られたチーズが失われた時の対処の仕方が違う。

チーズは求めなければ得られないし、一旦得られたチーズも何時かは無くなる、それを如何に察知すべきだろうか。そして又、チーズが失われつつある時、実際に失われてしまった時には、どう行動すべきだろうか。スニフとスカーリー、ヘムとホーの行動を通して、世の中の様々な人々の変化への対応をなぞらえる。

この寓話によって、我々は常に変化に対して注意深くあるべきであり、変化が起きつつあるとき、あるいは変化が起きた時には、直ぐにその変化について行かねばならないし、そうすることによって、再び、「チーズ」を得ることが出来ると説く。

いささか、宗教の布教書のような、見え見えのアザとさを感じないではないが、まあ、確かに現状から中々抜け出そうとしないで、何時の間にか泥舟とともに沈むことになるよりは、変化を求めて現状打破を図るべきだというメッセージはまともではある。

（00年11月発行）