新世代ビジネス　　　　成毛真　　　　　　文春ネスコ　　　　　　

筆者は、35歳の若さで日本マイクロソフト社長となり、８年勤めたあと独立して投資コンサルティング会社を起こした。

新しい形のビジネス成功者であり当然ながら彼の「新世代ビジネス、知っておきたい６０ぐらいの心得」などという著作となれば、手にとってみたくなる。

新世代ビジネスでの成功には、今までの常識にはないような目新しい発想が不可欠だろうとおもいがちだが、ところが本書に描かれた心得の多くは、寧ろ、一世代前の経営者発言のような部分も多いのに驚く。チャールズ･シュワブのCIOであったポトラックの著書「クリック＆モルタル」の主張とも通じるものがある。

要は、インターネット革命だ、eトランスフォーメーションだと、天地がひっくり返るような話しだが、ビジネスの根本には社会の伝統だとか、風土だとか、文化、人、といった不変の要素があるということなのかもしれない。

曰く「実力主義は日本にいらない」「株式上場のメリットを疑え」「アメリカはフェアーじゃない」等々だが、良く読んでみると、それは、日本の経営風土にアメリカンスタンダードを形だけ取り込もうとする危うさを指摘するものである。

浮ついた時代迎合ではなく、経営者自らが確信をもてる心得を持つことが結局「新世代ビジネス成功の秘訣」というオチになるわけで、著者のような成功者は、やはり浮ついた潮流迎合者ではないなと感心させられる仕組みだ。

自らを「かなりのアマノジャク」と称するように、従来の常識にとらわれない発想と、「人生愉しくなければ」というネアカな人生観が、これからのビジネスマンには必要なのかなと思わせる。語り口は軽く、軽快に読める。

（00年7月発行）