中国人の心理と行動　　　　　　園田茂人　　　NHKブックス　　　

日本と中国は「一衣帯水」の近隣にあり、「同文同種」だからお互いが理解しあえるはずだと日本人は考えている。

しかし、最近、ビジネス分野のみならず、市民レベルでの中国との交流が広がって、身近に中国人と接してみると、日本人と中国人とは、全く、異なった思考方法や、習慣を持っていることに驚かされることも多い。

例えば、戦争の歴史問題についても、「もうそろそろ、過去のことは水に流して、新しい関係を築こう」という日本に対して、中国の怒りは大きいが、これは、中国人の思考方法を分析すれば十分理解できるのだと本書はいう。

過去の関係を忘れて未来の関係を築こうとする日本と正反対に、中国は過去の関係に基づくからこそ、将来の関係が築けると考えるからであるという。

このように、中国人の行動文法の基本にあるのは、人間と人間の結び付きである「関係」であるが、この「関係」は、先の例にもあるように、日本人の考える「関係」とは全く異なるものである。

中国人においては、「関係」とは、非常に深いものであり、又、生々しいものである。共に食事をする、贈り物をする、バックマージンを支払うといった、目に見え、測ることのできるもので「関係」は構築されてゆく。

このように物理的な利害関係によって築かれた「関係」は日本人にとっては、理解し難い「利己的損得」と映ってしまう。

その他、中国人の行動文法にあって日本での意味と異なるものに「面子」「人情」というものがあるが、これらも日本人の持つ意味合いと中国人の持つ意味合いは大いにことなる。

このように、日本と中国には心理や行動の原則に、大きな差異があるにも関わらず、「同文同種」であるとする先入観から、お互いが「裏切られた」といった誤解をしてしまうケースも多い。

中国人とは付き合い難いというイメージはビジネス分野などでは広がりつつあるが、本書が指摘するように、日本と中国が、相互の心理、行動原則の差異を理解することが、早急に必要といえよう。

(01年2月発行)