失敗学のすすめ 畑村洋太郎 講談社
「失敗は成功の母」ということばがあるが、人は成功からは学ぶことは少なく、本当は失敗から多くのことを学ぶことは、日頃我々レベルでも良く体験することだ。
タコマ橋の崩落事故という失敗から学ぶことによって、今や世界の橋梁技術が飛躍的に高度化した例のように、失敗を失敗のまま終わらせず、その失敗に至った原因、過程を分析し、成功への対策を練ることは極めて重要だ。
しかし、失敗を恥ずべきこと、隠すべきこととすることであるとする心理は、失敗から、あるいは失敗の予兆から目をそむけがちである。
JCOの臨界事故、雪印の食中毒事件、日比谷線の脱線事故と立て続けに技術大国日本という看板が揺らぐような失敗が続いているが、これらの失敗も「全く予想できなかった失敗」かというと、そうではなく、数々の予兆があったし、結果からみれば失敗すべくして失敗しているのだがその現実から目をそむけていたからこそ起こったといえないだろうか。
著者自身、東大の機械工学の研究室で死傷事故にもなりかねない爆発事故という失敗の経験を持ち、この失敗に至った過程を検証し分析することによって、多くのことを学んだという。
その経験に基づいて、「失敗学」を提唱し失敗という貴重な財産を如何に生かすべきかを取り上げたのが本書である。
社会、個人をとわず、あるいは企業経営においても、失敗が何故起きるのか、どうしたら防げるのか、何を学ぶべきかといったまさに「失敗学」の周辺を知ることは、大いに役立つことであろう。
（00年11月発行）