泡のサイエンス　　　シドニー・バーコウィツ　　紀伊国屋書店　　　

泡とは実に不思議な物質である。バブルといえば正にはかなさの象徴のようだが、泡の構造は実に複雑で、固体、液体、気体の泡、そしてその三態を合わせた性質をもつ泡と多種多様であって、とてもはかないものなどと一言で言い切れないものだ。

ミクロの世界の泡は、ブラックホールとかワームホールといわれるもので、正に「有」の世界と「無」の世界の境目にある。マクロの世界でいえば、この宇宙の全体構造が泡の構造であることも分かってきている。

いやはや、泡は実に奥深い。

本書は泡という物質についての実に興味深い解説書だ。決して難解ではなく、話しはビールやカプチノの泡、ホイップクリーム、メレンゲの泡といった食べられる泡からはじまり、何と、未来のエネルギー問題を解決する可能性のある泡、宇宙論、量子力学へと発展する。

生命体を形作る最小単位は細胞であるが、その細胞の性質も泡と似通っている。無数の泡構造の集合体が、生物の個体を形成する不思議さは、やはり「泡の科学」の一分野といえるだろう。

宇宙探査にも活躍しているエローゲルという摩訶不思議な泡の話しも面白い。泡という物質についての解明には程遠いのが現状ではあるらしいが、泡の解明こそが物理統一理論完成の近道であるようにも思えてくる。

（01年5月発行）