インターネット不況　　　マイケル･マンデル　　東洋経済　　　　

本書の原著は昨年9月に発行された。現在、ITバブル崩壊は深刻な現実となっているので、本書の内容はさして斬新なものにうつらないが、「インターネット不況」がまだそれほどはっきりと認識されていなかった昨年のその時期に、これだけの内容に言及していたとすれば、中々の慧眼ということができよう。

97年当時、「ニューエコノミー論」が誕生した当時から「ニューエコノミー否定論」は根強かった。「生産性の向上」、あるいは「景気循環を脱した」といったニューエコノミー論のある特長的な点をとらえての批判であったが、それなりの説得性もあった。

著者はその当時からニューエコノミー論者である。しかし、その主張は当時のニューエコノミー論とは一線を画するものである。

まず、著者はニューエコノミーとは、インターネットを中心とする、テクノロジー･イノベーションが、新しい形のアメリカ型のベンチャーキャピタルを中心とする金融システムによって連鎖的に拡大するシステムであると分析する。

このようなダイナミックな新しい資金供給システムが発達しない欧州や、日本がアメリカのようなITブームにはいたらなかった理由が理解できる。

さらには、そのような「ニューテクノロジーと新しい金融システム」の循環に依存しているニューエコノミーは一旦、その循環が途切れると、その不況は大きなうねりとなることを指摘する。まさに、現在起きている現象を言い当てているかに見える。

「景気循環を脱した」ではなく、ニューエコノミーであるからこそその景気循環による不況は深刻なものになるとのご宣託である。

大恐慌との比較などにおいても、視点は中々ユニークであり、「ビジネスウィーク」の編集者らしく、論理だてもしっかりしており読みごたえがある。

（01年8月発行）