王妃の館（上・下）　　　　　浅田次郎　　　　集英社　　　　

浅田次郎作品のエンターテイメント小説としての面白さは何時もながら感心させられている。「ぽっぽや」などの泣かせどころ、「プリズンホテル」笑わせどころなどは、当代有数といってよいかもしれない。

本書はタイトルからはフランス歴史小説ともおもわせるが、パリの由緒あるホテル｢王妃の館｣に集まった日本人ツアー客の悲喜こもごものお笑い人情劇である。

倒産寸前のツアー会社が企画したこのツアーは、同一日程で二組のツアー客をダブルブッキングで「王妃の館」に押し込めてしまうという破天荒なもの。

方や一人150万の「光ツアー」、もう一組は一人20万円の「陰ツアー」を、時間差をつけて同じホテルに泊めようというものだ。

ツアーの客には、不倫に破れリストラされたOL、元警官、オカマ、心中旅行の中小企業社長夫妻と様々に人生を背負った人たちである。

一方、このツアーに参加している流行作家の筆になるところの太陽王ルイ14世にまつわる愛の物語も同時進行していく。

物語が広がりすぎるきらいがあり、浅田次郎の得意とする短編にくらべるとやや面白みにはかけるかもしれないが、これだけの登場人物と、様々なストーリーを織りなして大団円にもっていく力量には驚かされる。

（01年7月発行）