消費資本主義の謎を解く 松原隆一郎 ダイヤモンド社
デフレ化の進行、不良債権処理の遅れによる金融問題、財政赤字、と日本経済をとりまく状況は厳しい。
様々な処方が検討され論評しているが、一言で言えば「消費の不振」がすべての元凶ではないだろうか。
そもそも、経済を語るとき、或いは景気の回復策を語るときに「消費」からの分析で語ることは余りなされていない。
著者は前著「消費資本主義のゆくえ」においても、消費からのアプローチを強く主張していたが、本書もその主旨で著者が発表したこの2年間ほどの論評をまとめたものだ。
「消費」の大部分を占めるのは個人消費である。その個人消費を分析するとなると、正に心理学や社会学を総動員しても尚、手にあまるものがあるのだが、著者の消費の分析とは、中々庶民感覚をもったものであって、人気CDの売れ方や、eビジネス、ユニクロのビジネスモデル等々、経済学書というよりは、最近の「マーケットトレンド」といったおもむきもあってなかなか手広い。
もっともそれだけ話しが広がりすぎるために、経済学というよりはエッセー集という作りになってしまったのは致し方ないだろう。
著者は本書において構造改革を迫られる日本経済の全体の見取り図を意図したとのこと。必ずしも完結はしていないものの、日本経済のおかれている問題点の指摘はあらかたなされている。
（01年9月発行）