月光仮面の経済学　　　　　　金子勝　　　　　NHK出版　　　12/7/01

世の中何かと変だ。そもそも、スローガンだけ叫んでいる首相の支持率が何で8割だ9割だということになるのか。「痛みを我慢しろ」とはいうけれど、痛むのは弱者ばかりで、利権にあぐらをかいてきた政治家や、経営者などの「食い逃げ世代」は何の責任もとらず、痛むこともなくのうのうとしている。

凶悪な犯罪は、良くみてみれば弱い者の加害者が弱い被害者を襲っている。

月光仮面のような普通の人間でありながら正義のために戦うものがいなくなっているというのが著者の嘆きである。

経済学者の時事評論で、しかもエッセー的にも面白いという中々の出来である。

時事評論というのは、何だか世の中を偽悪的に批判ばかりしているか、やたらとアジテーションっぽいものが多いが、本書も多少はその傾向がないではないが、著者の世の中を見る視座が定まっているので、好き嫌いはともかくとして明快感はある。

アメリカンスタンダードの競争の論理を、いかにもグローバルスタンダードであるかのように押し頂いた結果、剥き出しの競争が是とされ、社会的な優しさを失ってきている日本の現状を、昭和大恐慌から太平洋戦争へとむかった当時の日本と対比しての、嘆きも中々面白く読める。

（01年11月発行）