こんな死に方してみたい 須田治 角川書店
本書は全6章からなっているが、表題にかかわるものは前半の2章のみであって、その後の章は、「老い」をテーマにした幾つかのルポを再構成したものであるから、一寸、このような表題で一冊を出版してしまうのはどうかと思わないではない。
表題に関する前2章は末期ガンに冒された患者などが、「畳の上で、家族に囲まれて死ぬ」ということをサポートしているホスピス、あるいは在宅治療機関のルポである。
医療技術が進み、今や病院で最後の時を迎える人がほとんどではあるが、果たしてこのような死に方が幸せといえるだろうか。チューブにつながれ、物として扱われるような医療を拒否することは実は難しい。在宅となれば、家族を始とする多くの人の手を必要とする。しかし、こういう死を迎えることが出来る人は実に幸せな最後を迎えているということが、このルポでは再三のべられている。
死ぬこととは、死に向かって生きることであるということを、現代の医療は忘れているのかもしれない。
（01年10月発行）